新理事長からのご挨拶

理事長 河田史宝

本学会が2017年8月に設立され、2022年7月9日から第Ⅲ期目に入りました。総会で信任されました第Ⅲ期の理事の任期は、2025年総会までとなります。理事の紹介は、ホームぺージに掲載されておりますのでご覧ください。また、事務局の所在も愛知学院大学から金沢大学に移転しておりますので、合わせてご覧ください。今後3年間どうぞよろしくお願いいたします。

さて、本学会は、学校の中で養護教諭の行う日々の教育実践(養護実践)を研究の中心に据えて、その教育実践(養護実践)に焦点を絞り、その成果を学術論文として蓄積していくことを目指しています。学術論文として蓄積していくことで、養護教諭の実践の「見える化」につながり、養護教諭の実践(知)、や経験(知)を言語化・体系化していくことつながります。これらを学会として積み重ねていくことで様々な(知)が蓄積され、「養護教諭の養護学」の構築ならびに学問的位置づけに貢献できるのではないかと考えています。
養護教諭の教育実践の成果を学術論文としていくためには、養護教諭が行っている教育実践を科学的に整理し、言語化して「誰もが理解できる論文」、「誰もが納得できる論文」を作成していく必要があります。その際には、実践レポートと論文の違いを意識して、「方法」と「結果」を区別して客観的に書くことが重要になります。論文をどのように書けばよいか等まとめることや書くことに悩んでいる方は、「論文の書き方」のワークショップを学術研究運営委員会が開催していますので、ぜひ申し込みをされることをお勧めします(ホームページ参照)。教育実践に関して様々なアドバイスや支援を得ることができます。また、「養護学」確立に向けた、養護教諭の実践や経験の言語化・体系化(すなわちエビデンスの蓄積)の必要性や方策についての検討を学術研究運営委員会と編集委員会が連携して進めていくことも予定しています。
養護教諭が行う教育実践の中には事例研究も多くあると思います。「養護実践学研究」の第1巻、第2巻では事例研究を書く場合の重要なポイントが端的に示されています。ポイントとしては、「研究仮説」が設定されているか、事例論文における「一般化」が意識されているか、「評価方法」が設定されているかなどがあります。事例研究として投稿しようと考えていらっしゃる養護教諭の方は、一度読まれて、論文を書いていただければと思います。
養護教諭の教育実践を検証し、論文化することは養護教諭の専門性を社会に発信し、学問領域として「養護学」を構築するために必要不可欠な事項だといえます。多くの現職養護教諭の方が本学会の養護実践学研究に投稿してくださることを願っています。そして、「養護教諭の養護学」の構築につながることを期待しています。

2023年の第6回学術集会は、「アフター・コロナ時代の養護実践―共に学び子どもの未来を拓く―(仮題)」と題して、2023年7月8日に行う予定にしております。学会長は日本養護実践学会副理事長・愛知学院大学教授 下村淳子氏です。対面方式での学会開催を考えていますが、新型コロナによる感染者の増加等の状況に合わせて、オンライン配信・オンデマンド配信も検討しております。多くのみなさまの参加をお待ちしております。

日本養護実践学会 理事長 河田史宝

<参考文献>
1)古田真司:「養護実践学研究」への投稿論文の書き方-学校現場の養護教諭の皆様に向けて-、養護実践学研究 1(1), 97-101, 2018
2)古田真司:「養護実践学研究」における「事例研究」掲載に関する指針(暫定案)-養護実践の論文化に向けての新たな提案-、養護実践学研究 2(1), 99-103, 2019
3)原郁水:養護実践学における事例研究の論文化に関する一考察、養護実践学研究 2(1), 5-11, 2019

 

以下、これまでの理事長からのご挨拶


日本養護実践学会2022年の第5回学術集会について

日本養護実践学会 理事長 村松常司

新型コロナの感染は2019年に報告されてから2022年2月になっても終息が見えず、ますますひどくなっています。新型コロナは我々の健康・生活に多大な影響をもたらしており、三密を避けることが感染予防の中心であることから当然学会活動も通常の形では出来ません。そこで、本学会の2022年学術集会をどうするかについて、2021年6月に、理事長、副理事長、各委員会委員長、事務局長とでZoomによる話し合いを持ちました。その内容をお話ししたいと思います。
学術集会を中止または延期にすることは簡単であるが、学会の責務としての、①学術集会(総会)を開く、②学会誌を発行することについては考えが一致していました。話し合いでは種々意見が出され、最終的に現在のコロナ禍でも委員会は活動していることから、その委員会活動報告を中心として行っていったら良いのではないか、すなわち委員会活動(編集委員会、学術研究委員会、広報・渉外委員会)を学会員に「見える化」することで2022年の学術集会としたらどうかという方向性が示されました。どんな形でも良いから、小規模であっても学会活動を継続していくことが大切であることが確認されたと言えます。勿論新型コロナの状況が大幅に改善すれば別途企画することは言うまでもありません。
2021年の第4回学術集会はコロナ禍の中ではありましたが、桃山学院教育大学を会場にして、八木利津子教授が大学を挙げて準備をしていただき、みごと成功裡に終了しました。頭の下がる思いでありました。ありがとうございました。
そこで、2022年の第5回学術集会は、①開催時期は7月9日(土)、②学会長は村松理事長、副学会長は古田副理事長、事務局長は松原理事が当たり、③学会会場は特に設置せずすべてZoom形式で行う、④予算はできる限り抑えて行う、ことになります。2022年2月現在、新型コロナによる感染者はますます増えており、対面式の学会は考えられません。本学会におきましてもまさに緊急事態宣言です。
今年度は役員改選の時期でもあり、重要な年度となります。詳細については学会のホームページに掲載していきますので、ご理解いただきたいと存じます。今しばらくお待ちください。今後のご意見、ご協力を御願いいたします。

 

養護教諭を「思うこころ」と「思う気持ち」の見える化

日本養護実践学会 理事長 村松常司

2020年(令和2年)1月30日付けで日本学術会議から日本養護実践学会を「日本学術会議協力学術研究団体」に指定したとの通知が届きました。誠に嬉しい限りであります。今後、身を引き締めて学会活動をしなければならないと思います。
先に、学会誌「養護実践学研究」の中で日本養護実践学会の設立趣旨1)2)3)について述べていますが、今一度お話ししたいと思います。
私たちには養護教諭を「思うこころ」と「思う気持ち」があるから、日本養護実践学会が設立できたと思います。しかし、この「思うこころ」や「思う気持ち」は目に見えません。従って、目に見えないまま、「養護教諭は研究活動をやっていますとか、養護教諭の養護学はあります」と言っても、養護教諭の「養護学」の確立は遠い道のりです。それを確立するには養護教諭の実践を目に見えるようにすること(見える化)が何より大切と思います。
日本の養護という言葉には、領域を超えて3つの概念4)が存在していることは周知の事実であります。一つは特別支援学校教育領域における養護、二つ目は福祉分野領域における養護、三つ目は学校教育における健康をつかさどる養護教諭の養護であります。
そこで養護教諭の「養護」を目に見えるように(見える化を果たす)し、体系化する必要があります。そのため、現在本学会としては以下のことを行っています。
1)まず、学会を作って養護教諭の研究活動を社会に発信する。
→ 2017年に「日本養護実践学会」を設立した。
2)次いで、学会誌「養護実践学研究」を発刊して研究論文を紙媒体で残す。
→ 2018年5月に第1巻1号を発刊し、2019年6月に第2巻1号を発刊した。
→ 2019年度からは1号に続き2号の発刊も決定し、11月に第2号を発刊した。
3)本学会誌で掲載する論文の性格ははっきりしている。
→ 養護教諭の指導(教育)で、児童、生徒の健康に関する行動変容を追究している研究であることが必須である。
4)学会の使命である学術集会、総会を毎年開催する。
→ 第1回学術集会・総会は2018年に愛知県名古屋市で、第2回学術集会・総会は2019年に大阪市で開催した。第3回学術集会・総会は2020年7月5日に愛知県大府市にて開催する。
5)日本学術会議協力学術研究団体に登録して社会的信用を高める。
→ 協力学術研究団体として指定されただけでは学会誌の質は向上しない。従って、質の高い論文を数多く経年して掲載していくことが必須である。2020年1月30日に、本学会が日本学術会議から無事「日本学術会議協力学術研究団体」として指定されました。本学会の「見える化」の一つが実現しました。
6)学会として学会員の研究の進め方や論文作成の研修(支援)を行う。
→ 日本各地区で論文作成のワークショップを開催している。
7)養護教諭(現場)と大学教員(研究者)が連携・協働して論文を作る環境を整える。
→ 本学会は養護教諭の実践の学術論文化への道筋を学術研究委員会ならびに編集委員会が協力して具体的に提示している。
8)論文の質確保のために査読を行っている。
→ 論文は目的が明確であるか、調査方法が的確であるか、評価方法は客観的ではっきりしているか、結果(データ)は分かりやすくまとめているか、確かな証拠(エビデンス)があるか、文章は客観的に書かれているか等が大切である2)。本学会は学術論文化としての適切な査読を行っている。

本学会は2017年に設立し、現在の会員数は180名を越え、大学教員は50%を超えました。第1期(2017年から3年)の役員任期は2020年3月で終了します。第2期は2020年4月から始まり2022年3月に終了します、学術集会・総会は2020年に第3回を迎え、学会誌は第3巻1号、2号が発刊されます。今までに発刊した学会誌のそれぞれには多くの学術論文が掲載でき、養護教諭の実践の研究成果を社会に発信することができました。この勢いで「養護教諭の養護」の「見える化」を推進していきたものです。
このように養護教諭の実践の「見える化」に繋がる事業を根気よく続けていけば、その先に「養護教諭の養護学」確立の道が見えてくるのではないかと考えます。

<参考文献>
1)村松常司(2018):日本養護実践学会と学会誌「養護実践学研究」、養護実践学研究、第1巻、1号、1-2
2)古田真司(2018):「養護実践学研究」への投稿論文の書き方、学校現場の養護教諭の皆様に向けて、養護実践学研究、第1巻、1号、97-101
3)徳山美智子(2019):「養護学」体系化への道程、「日本養護実践学会」と「養護実践学研究」の果たす役割の重要性、養護実践学研究、第2巻、1号、1-4
4)岡田加奈子ら(2015):養護の内容と枠組みに関する検討、東京学芸大学大学院連合学校教育研究科、教員対象「研究プロジェクト」研究実施報告

 

日本養護実践学会と養護実践学研究(養護実践学研究第1巻第1号・巻頭言から転載)

日本養護実践学会 理事長 村松常司

本学会では、学会誌「養護実践学研究」を発刊し、多くの養護教諭の先生方の教育実践を学術論文としてまとめていきたいと考えています。養護教諭の職務は多岐にわたり、これまで日本学校保健学会、日本養護教諭教育学会、日本健康相談活動学会などの関連学会で養護教諭の教育実践が多面的に報告されてきましたが、未だ養護教諭の「養護学」としての体系化の構築に繋がっていないのが現状であります。そこで、我々は、学校現場で養護教諭が行っている教育実践を科学的に整理し、言語化して「誰もが理解できる論文」、「誰もが納得できる論文」として学会誌「養護実践学研究」に積み重ねていくことが、養護教諭のための「養護学」の体系化の構築ならびに学問的位置づけに貢献できるのではないかと考えました。
朝倉1)は、養護教諭が研究を行う意義として、「①養護教諭が行う調査研究や実践研究は、私たちが子どもたちの生き方や健康課題に関わる現実的認識を得る上で有効な手段である。②それらの研究により生み出された知識や情報は、他の養護教諭や一般教員、管理職、保護者などと共有することが可能で、互いに議論し共通認識を培う材料にできる。③さらには、健康問題の心理社会的要因を知ることができ、その点をふまえた養護教諭の実践により、子どもの健康問題の改善を図ることが可能となる。」と指摘しています。加えて、「研究を進める上で、そのテーマが学校現場の健康課題の解決に貢献する課題であるか、養護教諭の専門性や実践の向上に資する課題であるかチェックすることも大切である。」としています。これらの指摘は極めて重要な指摘と思います。
我が国では、「養護」という言葉については、領域を越えていくつかの概念が存在していることは周知の事実であります。岡田ら2)によれば、大きく分けて、①養護教諭領域、②特別支援教育領域、③福祉分野領域の3領域でそれぞれ「養護」という言葉を使用していることが報告されています。①養護教諭領域では、学校教育の中で「健康」という切り口で児童、生徒たちを支援(養護)していることは言うまでもありません。②特別支援教育領域では、特別な支援が必要な子どもの「特別養護」に限定して支援しています。③福祉分野領域では、児童・高齢者と社会的に弱い立場の者全般を対象として支援(養護)しています。こうした領域を越えて「養護」の概念が使われていることを踏まえて、本学会では、養護教諭の実践研究を学術論文として集約していきたいと思います。すなわち、養護教諭が行った保健指導や保健教育で変化した子どもたちの姿を報告していきたいと思います。
平成30年5月に「養護実践学研究」の創刊号を発刊できたことは誠に喜ばしい限りであります。今後、継続して「養護実践学研究」が発刊され、近い将来、養護教諭のための「養護学」の体系化ならびに学問的位置づけに貢献できることを願うものであります。養護教諭の先生方は勿論のこと、本学会の趣旨に賛同していただける方々に多数入会していただき本学会の活性化が進み、発展することを期待します。
尚、学会名の「日本養護実践学会」、学会誌の「養護実践学研究」の英語表記が決まりました。「養護実践」=「養護教諭の実践」であるという定義から養護教諭という職種がイメージできる学会の名称が求められ、また、国内外に通用する養護教諭をイメージできる英語として最終的にSchool Nursing を用いることになりました。さらに、教育職員である観点からHealth Education を並列しました。かなりの時間を要しましたが、下記の英語表記を使用することになりました。
日本養護実践学会:The Japanese Society of Practice in School Nursing and Health Education
養護実践学研究 :The Japanese Journal of Practice in School Nursing and Health Education

<参考文献>
1) 朝倉隆司(2017):養護教諭が行う研究、養護教諭のための現代の教育ニーズに対応した養護学概論-理論と実践-(岡田加奈子・河田史宝編)、86-101、東山書房、京都
2) 岡田加奈子、他(2015):養護の内容と枠組みに関する検討、東京学芸大学大学院連合学校教育研究科、教員対象「研究プロジェクト」研究実施報告書

 

理事長からのご挨拶

日本養護実践学会 理事長 村松常司

日本養護実践学会を平成29年8月30日をもって設立することができました。本学会の目的は、養護教諭のための「養護学」の学問的位置づけを確立するとともに体系化を図ることを目的としています。養護教諭の職務は多岐にわたり、これまで関連学会で養護教諭の教育実践を多面的に報告してきましたが、未だ「養護学」としての体系化に至ってないのが現状と考えます。そこで、我々は、学校現場で養護教諭が行っている教育実践を科学的に整理し、言語化して「誰もが納得できる論文」として積み重ねていくことが「養護学」の体系化に繋がるのではないかと考えました。本学会では学会誌「養護実践学研究」を発刊し、多くの養護教諭の先生方の教育実践を論文としてまとめていきたいと考えています。皆様のご理解とご協力をよろしくお願いします。

本学会設立後初めての学術集会である第1回日本養護実践学会は、平成30年7月1日開催され、無事終了しました。多くの参加者にお集まりいただき、熱心な議論が行われましたことにつきまして、参加者の皆様および学会の実行委員の皆様に深く感謝致します。
(第1回学術集会・学会長 村松常司)